大豆を
つくる

「農業には興味があるけれど、今の仕事を辞めて農家になる勇気はない……」 「週末だけ畑をやってみたいけれど、家庭菜園には留まりたくない」 そんな方に知ってほしいのが、「半農半X(はんのうはんエックス)」というライフスタイルです。 これは、単なる「副業」とも、昔ながらの「兼業農家」とも少し違う、新しい生き方のこと。 自分たちが食べる分の食材を育てながら、残りの時間は自分の得意なことや好きなこと(X)をして社会とつながる。 そんな、豊かに暮らすためのヒントを紹介します。

「半農半X」とは、1990年代半ばに塩見直紀さんが提唱した言葉です。 その定義はとてもシンプルで、「小さな農業で自分や家族が食べる分の食料をまかない、残りの時間は『X(エックス)』=自分のやりたいことや使命(ミッション)に費やす」という生き方を指します。
ここでのポイントは、農業を「お金を稼ぐ手段」としてだけでなく、「人間らしい豊かな暮らしの土台」として捉えている点です。 自然に触れ、汗をかいて食べ物を作ることで心を満たし、そのエネルギーで「X」の活動を行う。そんなバランスの取れた生活を目指すスタイルなのです。
「別の仕事を持ちながら農業をする」と聞くと、「兼業農家」と同じではないか? と思うかもしれません。 しかし、その「目的」が少し異なります。
兼業農家の場合
農業は「収入源のひとつ」です。 市場や農協に出荷して売上を立てることが基本となるため、効率よくたくさん作ることが求められます。世帯の収入を安定させるために、農業と別の仕事を掛け持ちするという考え方が一般的です。
半農半Xの場合
農業は主に「自給自足(自分たちで食べるため)」です。 儲けることよりも、安心できる食べ物を自分で作ることや、土に触れてリフレッシュすることなど、「心の豊かさ」や「生活の質(QOL)」を高めることに重きを置いています。
もちろん、半農半Xを続けていくうちに収穫量が増えて販売するようになる人もいますが、スタート地点の「心の持ちよう」が少し違うのです。
「半農半X」の「X」には、何を入れても構いません。今の仕事でも、趣味でも、地域のお手伝いでもOKです。 実際にこんな「X」を持っている人たちがいます。
半農半エンジニア
パソコンに向かう仕事の合間に、土いじりでリフレッシュ。
半農半ライター
畑での発見を記事にして発信する。
半農半アーティスト
自然の中で感性を磨き、絵や作品を作る。
半農半子育て
自然豊かな環境で、子供と一緒に大豆を育てる。
最近ではテレワークが普及したことで、会社員のまま都会を離れ、田舎で農業を始める「半農半会社員」というスタイルも増えています。
これから半農半Xを始めるなら、最初のパートナーとして「大豆」はとてもおすすめです。
手間がかかりにくい
夏野菜のように毎日収穫する必要がなく、乾燥させてからまとめて収穫できるため、週末農業に向いています。
種を次につなげる
大豆は、収穫した豆を少し残しておけば、それが翌年の「種」になります(自家採種)。種を買わずに、命のサイクルを自分の手で回していく。そんな農業の醍醐味を味わいやすい作物です。
自給自足の満足感
味噌や豆腐、納豆など、普段の食卓に欠かせないものが「自分で作った大豆」に変わる喜びは格別です。
日本の食を支える
あなたが育てた大豆が、わずか6%しかない日本の自給率を押し上げる力になります。

これまでは、スーパーで大豆製品を買って食べる「消費者」だったかもしれません。 でもこれからは、自分の食べるものを少しだけ自分で育ててみる「つくるひと」になってみませんか?
土に触れ、風を感じて汗を流す時間は、パソコンやスマホの画面を見ているだけでは得られない、心と体のリフレッシュになります。 まずはプランターからでも、週末の農業体験からでも。 「半農半X」という選択肢が、あなたの暮らしを少し豊かに、そして日本の食卓を少し未来へ進めるかもしれません。

アグリツーリズムの紹介
農業に興味があるなら、まずは体験から。農家の家に泊まり、土に触れ、採れたてのご飯を味わう新しい旅「アグリツーリズム」。大豆の収穫や味噌づくりなど、半農半Xへの第一歩です。
